【統計コラムvol.1】成功確率80%の臨床試験を実施するためには(前編)
2023.12.22
医薬候補品の承認を得るために、どのよう臨床試験をデザインするかは非常に重要な課題です。
弊社所属の統計家が3回に分けて解説をさせて頂きます。
2群間の有効率の差を比較するχ²検定における必要症例数を設定する方法
1.χ²検定を実施する前にサンプルサイズを設定する理由
2群比較の臨床試験を企画し、新薬が既存薬よりも有意に優れた有効性を示す場合には、通常、χ²検定が用いられる。しかし、この検定では、サンプルサイズが大きいとP値が小さくなり、両群の有効率の差が小さい時でも、P値が0.05以下となり、有意差有りとする結論が出てしまう場合がある。
逆に、サンプルサイズが小さいとP値が大きくなり、両群の有効率の差が大きい時でも、P値が0.05を上回り、有意差無しとする結論が出てしまう場合がある。
結局、P値が小さくなった時に、「群間差があってP値が小さくなった」のかあるいは「サンプルサイズが大きいためにP値が小さくなったのか」の2つの可能性が残ってしまう。
この可能性をなくすためには、適切な検出力を確保できる症例数を事前に設定した上で、臨床試験を実施する必要がある。
2. 有効率の差を比較する場合の検定(χ²検定)における例数設計の方法
臨床試験における必要症例数は以下の4つの項目を決定することにより、設定できる。
①新薬の真の有効率、
②既存薬の真の有効率、
③検定における第1種の過誤(αエラー)
④第2種の過誤(βエラー)乃至は検出力(パワー)
このうち、第1種の過誤(αエラー)、第2種の過誤(βエラー)乃至は検出力(パワー)について理解する必要があり、図1で説明したので、参照して貰いたい。